先般発表された新レンズ(マクロ1、PCタイプ3)は驚きであると同時に、 ある種の方向性において当然ともいえる内容であった。 ここから、ニコンは新レンズ開発において次の様な戦略を持っていると推測される。 (1)一般的な撮影向けにはズームレンズのラインナップ強化で対応 (2)特殊分野向けレンズは順次リニューアル(設計変更、AF-S化、等) 昨年末に発売された14-24mm F2.8は、従来の単玉14mmよりもカタログスペック上は高性能である。 商品ラインナップ或いは単純に商売上の理由として、このレンズが存在する以上は単玉14mmが リニューアルする可能性は極めて小さいと考えるのは当然であろう。そしてこの意欲的な ズームレンズは24-70mm F2.8と70-200mm F2.8の3本をもって、F2.8通しのズームレンズシステムが 完成したと他ならぬニコンが大々的に喧伝している。これは、14mmのみならず、この領域に含まれる 単玉のリニューアルは無いと暗に宣言していると考えられる。 故に、当面(恐らくデジタル一眼レフ全機種がフルサイズ化でもしない限り)は 14、20、28、35、50、85の各単玉の新型は無いと予想する。 実際、DSLRが本格的になり始めて以降、リニューアル若しくは追加された単玉は10.5mm魚眼と 105mmのマイクロ(マクロ)のみである。更に前述した様に、今春及び秋発売予定の4本の単玉も 全て特殊分野の物である。 ここから次に出てくるレンズは(1)特殊用途であり(2)現行ラインナップにおいて設計の古さが 強く感じられる物のリニューアルが堅いと考える。 この条件に当てはまるのはズバリ、フルサイズ(ニコン流に言うならばFXフォーマット)に対応した 魚眼レンズである。現行、フルサイズ対応の魚眼は16mmのみであるので、このレンズの代替レンズが 次(と言っても早くて2008年末、恐らくは2009年春)の新レンズ最有力候補と予想する。 尚、焦点距離に関しては16mmそのままではなく、12mmか10mm辺りまで短くして来るだろう。 ネット上では前項で否定した14〜85mm辺りの単玉のリニューアルを望む声は多い様に思われるが、 それは単に満足している者は何も言わないというだけの事であり、所謂サイレントマジョリティーは 単玉は欲していないと思われる。仮に単玉を欲しがっているのが多数派ならば、それを商売のネタとして ニコン自身が掴んでいないはずは無く、そしてニコンの行動からは単玉欲しがり派は少数派であるという 結論しか導けない。売れない物は作らない、或いは既に存在するラインナップが致命的でない限りは そのまま継続されるという事である。その一方で、ズームレンズがあればOKとはならない領域があり、 それが特殊用途向けレンズの定期的なリニューアルという形になっているのである。 個人的には単玉のAF-S化は是非して欲しいと思ってはいるが、ここまで述べてきた様に 残念ながら実現性は低いと考える。 という訳で、出てきそうも無いレンズを待っているよりは単玉に関しては今あるレンズを とっとと集めて遊んだ方が得策である。