蛹を見付けた。毎日通り抜ける家の近所の公園の植え込みの傍。 投げ棄てられた煙草の吸い殻と間違えて踏みそうになる。 そのままではいずれ誰かが踏むだろうと思ったので、摘み上げて 植え込みに放り込んでおいた。手にすこし生臭い臭いが移った。 次の日、ふと植え込みを覗くと蛹があった。 それ以来、毎日様子を見るのが日課の様になっていった。 何日かして、蛹の色が変わっている事に気付いた。 そっと手に取って見た。薄っすらと飴色がかり、何かが透けて 見えそうな雰囲気。じっと眺めていると、蛹は突然動いた。 まるで悶えるように、その節だけの下半身をよじって。 驚いて、思わず手から落としてしまった。 そして逃げる様に、その場を離れた。 翌日、蛹は潰れていた。上半分を誰かに踏まれたらしい。 植え込みの躑躅から枯れ枝を折り取って、潰れた蛹を突いてみる。 潰れた上半分が離れて、下半分の何かを引きずり出した。 それは人の足に見えた。 潰れた蛹を持ち帰り、小さな皿に乗せて眺めた。 やはり人の足の様に見える物が生えている。 白く、細く、滑らかな。 生き物は成長の過程で進化の道筋を辿るという。 白い足は蛹の記憶なのだろうか、それとも。 蛹は数日後には黄緑色に変色して異臭を放ったので棄てた。 あれから私は蛹を探し続けている。