「聞いてきたよ。」
「ああ、聞こえたよ。」
「居ても居なくてもいいらしい。」
「分かってないね、ミドリは。」
「何が?」
「彼等の発言の真意がさ。」
「どうして?」
「言葉になってない、心情が有るのさ。」
「???」
「たとえばトウジ君の場合は、
"・・・騒々しいだけやで。でも、それがかわいいとこなんや"
という具合かな。」
「わかんないな、つまり本音は言葉では表現されないって事?」
「分かってきたようだね、そういうことさ。」
「難しいな。心って。」
「ミドリは人生勉強が足りないね。じゃ、ちょっと失礼するよ。」
カヲルはそうしてシンジの所へ行ってしまった。
ミドリはその様子を離れた所から見ていた。
声は聞こえなかったが、展開は想像できていた。
カヲルは何かを言いかけて、そしてレイとアスカに撃沈された。
やっぱり。ミドリの思ったとおりの結末。
なぜカヲルはあの二人の攻撃が、かわせないのだろう。
カヲルなら造作も無いはずなのに。
ミドリはしばらく考えた。
そうか、本音は言葉にされないってカヲルが言ってたな。
カヲルはいつもシンジ君に愛を告げているけど
あれは本心じゃ無いんだ。
カヲルの望みはレイとアスカちゃんに張り倒される事なんだ。
それならカヲルが、かわさない理由も判る。
なーんだ、私にもちゃんと人の心が判るんだ。
それともカヲルが判りやすい奴なのかな。
「ふふっ。」
ミドリは一人で含み笑いをした。
だれも気付かなかったが、しばらく笑っていた。