宿題

土曜日の午後。
シンジは頭を抱えていた。
明日は出かける予定が有るので宿題をやっておこうと思った。
数学と物理。
苦手な科目と言っていいだろう。
誰かと一緒にやりたい所だった。
一番手近なレイは、居ないのだった。
もしかしたら隣の惣流家に居るのかも知れない。
行ってみるか?
いや、止めておこう。
レイとアスカが揃うと心強いのだが
横道にそれて宿題が進まない可能性が高い。
ミズホもくわえて大騒ぎになりそうだ。
トウジとケンスケを呼ぶか?
だめだ、TVゲーム大会になるのがオチだろう。
そう言えば、ミドリってどんな科目が得意なんだろう。
そんな話をしたことが無い。
聞いてみるか?
だめなら、一緒に誘って隣に行けばいいだろう。

ベランダへ出る。
便利だとは思うが ...いいのかなぁ。
この渡り廊下を見る度に思う。

目的の相手は途端に見つかった。
ベランダに椅子を出して座っているのだ。
レイの話によるとリサイクル品だそうだ。
ちょうど日向の部分に陣取っている。
今日は薄いブルーのセータに濃紺のソフトジーンズだ。
気のせいか、同じ服装を見た覚えがない。
まあ、引っ越してきて3週間程だからかとも思うが。
レイよりは部屋着にも気を遣っているのかも知れない。

近づいて用件を切りだそうとしたが。
「ミドリ、ちょっと ...」
どうやらお昼寝の最中らしい。
猫ミドリも一緒だった。
胸の上に乗ってこちらも寝ている。
苦しくないのかな、ミドリ。

隣にもう一つ椅子が出してあるので
元々はそっちに居たのかも知れない。
シンジはなんとなく空いている椅子に座った。
ちょっと試してみたかったのだ。
悪くない感じだ。
肘掛けに肘を立てて顎を乗せる。
そのまま顔をひねってみた。
ミドリの寝顔がある。
なんとなく見つめた。
しみじみ見たのも初めてだろうか。
起きているときはちょっとキツい感じの顔なので
あんまり見つめた事は無い。
いまなら平気だった。
「結構、可愛いかな。」
言ってから、周りを見回す。
誰も居なかった。
そのまましばらく見ていたが
いつのまにかシンジも寝てしまった。

数分後にアスカに叩き起こされるまで。


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