集光ビル群。
それは第3新東京市の外縁部に配置された
太陽光発電プラントである。
地上高100数十メートルの極薄のビルの表面は
ミラーと太陽電池で埋め尽くされ、市内の電力消費の
およそ40%を賄っている。
ミラーによって集められた太陽光線は各ビルの
基礎部分にある採光窓から地下にある蓄熱槽へ降り注ぎ
夜間にも発電を行うことが可能であった。
関係者が「光炉」と呼ぶそれらビルの内、
最も西側にある第4光炉は本来の役割以外に
もう一つの役目を持っていた。
「太陽光エネルギー開発事業の重要性を市民に御理解いただく場の提供。」
すなわち、発電プラントの見学コースを有しているのである。
第4集光ビルの見学コースは、ビル内の各所にある案内板と
自動アナウンス機による無人応対である。
見学者は興味のある施設に赴き説明を聞きメモをとる事になる。
見学用に整備されているとは言っても、そのための係員は
配置されていない。
ビルには通常の「光炉」と同様に6人のガードマンと
4人のオペレーターしかおらず、
玄関わきの受付に2人、ビル1Fに4人のガードマン。
地下3Fの制御室に4人がつめており、他は無人だった。

初夏の様な陽射しが照り付ける、ある春の日。
見学コースを訪れた一行があった。
学期末、そして学年末の言わば締めくくりの行事である。
市立第1中学校2年一行。
とは言いながら実際には各クラス別に生徒達が決めた
ルートで市内各所の公共施設を巡っていた。
シンジ達のクラスは
見学場所の一つである第4集光ビルに到着した所だった。

「諸君!あくまでも授業の一環なんだからね。しっかり見てきてね。」
ミサトの声に押されて、だらだらとバスを降りる一行。
「結構、時間掛かりよったな。」
「わざわざ見に来なくても、オンラインで情報収集出来るのに。」
「しょうがないよ。」
「僕はシンジ君の行くところなら何処にでも行くさ。」
「アンタは黙ってなさい。」
「でも、なんかちょっと遠足みたいだよね。」
一同、勝手なことを言いつつ駐車場にて次の指示を待った。
「じゃあ、班ごとにそれぞれ、しおりの指示のコースで見学して来て。
 集合時間に遅れないように、一ヶ所にあんまり長居しないでね。」
「はーい。」
みなそれぞれ、班ごとに見学者入り口へと向かう。
「なんで、レイとシンジが一緒でアタシたちは別な訳?」
班の分け方に不満を隠せない者が数名。
「私もシンジ様とご一緒したいですぅ。」
「しょうがないでしょ。葛城先生が名簿順に決めたんだから。」
言いつつ、こちらもちょっと不満がのぞくヒカリ。
「そうそう。しょうがないじゃん。」
露骨にうれしそうなレイ。
シンジ、レイ、ケンスケ他3名である。
少なくともライバルはいない。
アスカ、ミズホ、そしてトウジは別班である。
カヲル、ヒカリ、ミドリはまったくのばらばらになった。
「なんてことだ。こんなことなら早く入籍して碇性を名乗って...」
言い終わる前にカヲルは入り口わきの植え込みに消えた。
「じゃ、又後でね。」
シンジ達の班がエレベータに消え、つづいて他の班もそれぞれの
目的地へと散っていった。


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