「いよっ! こんちまた、お揃いですな。」
バスに突然の来訪者があった。
「あら、奇遇ね。」
「なんで、こんな所に居んのよ。」
「はは。仕事で近くまで来たんでね。」
「ちょっち、付き合って。」
3人はバスを降り、少し離れたところで話始めた。
リツコが口火を切る。
「私が調べた範囲では市内の方が派手になってるようだけど。」
「今のところはね。」
「加持君がこっちに居るって事は、こっちが本命ね。」
「少なくともあの人は、そう思ってる。」
ミサトが率直に疑問を投げ掛けた。
「やっぱり、あの子たちと関係ありなのね。」
「それについては現時点では不明。」
少々、面白がっている節のあるリツコが言う。
「何か手伝えることあるかしら?」
「2人は此に居てくれ。俺達が間に入るから市内よりは安全な筈だ。」
「俺達ね。」
「そういうことさ。」
加持の後方には3台の車が見えていた。

そして加持は第4光炉の方へ歩いていった。
ミサトとリツコがバスに戻ると生徒達の幾人かはバスの外に出ていた。
「これからどうするんですか?」
「市内で事件があったらしいの。ここで暫く様子を見ることにするから。
 なるべくバスの中に居て頂戴。」
生徒達もだたならぬ状況であることは察しているので素直にしたがった。
ただし、生理現象のため時々はバスを降りるものが居たが。
そして戻らない者が若干。
そのことに気付いた者も若干。

シンジが小声で前の席に話しかける。
「アスカ、なんか人数足り無くない?」
「判ってるわ。レイとミドリとバカ1名よ。」
「どうしよう。」
「アンタもバカねエ。どうしようも無いでしょ。」
「でも。」
「アタシだって心配してんのよ。でも。」
「やっぱりその辺、探してくるよ。」
「わかったわ。」
2人と、つられてもう1人が席を立った。
「私も行きますぅ。」
シンジもアスカも黙って頷いた。

バスを降りて歩きだそうとした瞬間。
「ちょい、待ち。」
いつのまにか3人の脇にミサトが居た。
「お揃いで何処に行くのかしら?」
「と、トイレです。」
「そうそう。」「ハイ。」
「だめよ。」
「でも ...」
「分かってるわよ。心配でしょうけど、私に任せて欲しいの。」
「...」
「いい加減に見えるかも知れないけど、一応、教師だし。
 結構マジに取り組んでいるつもりよ。だから。」
真剣な説得に頷く他は無かった。
他の生徒には、居なくなった3人は先に病院へ行ったと告げられた。
後のことをリツコに任せてミサトも先ほど加持が歩いた道を行った。

加持にはすぐに出会えた。
正確には加持と同行したメンバーと接触して連絡がついたからだが。
「やれやれ、そんなに俺と離れたくないのか。」
「その辺で、土に環りたいの?」
「いや、まだ遠慮しとくよ。」
「悪かったわね、手駒減らしちゃって。」
「お手柔らかに頼むよ。」
「でも、弱すぎじゃない?」
「油断したんだと思いたいね。」
「本題だけど、居なくなったの。3人程。」
「例の?」
「ええ。」
「少なくともここら辺は通過してないな。」
「まだ、包囲はしてないのね。」
「ああ。」
「じゃ。」
「まてよ、どうする気だ?」
「追うわよ。止めないでね。」
「止めはしない。が、提案がある。聞く気は?」
「 ...」
「よし。2人連れてそこの第10光炉に上ってくれないか。」
「私が?」
「見通しのいい場所からのサポートが欲しい。」
「でも、あの子達が。」
「俺達の仕事がさっさと済めば結果的に安全になる。」
腕組みをして考え込むミサト。
「明確な当てがあるわけでもないんだろ?」
「いいわ。」
「助かる。」
加持は指でサインを送り2人のメンバーを呼んだ。
「上から狙ってくれ。指示は彼女がする。」
「了解。」
それからミサトの方を見て。
「持ってくかい?」
ナイロン製の大きなバッグを指差した。
「遠慮するわ。」
そう言うと、双眼鏡と無線機だけ受け取ってビルへ向かった。

ミドリは一人で元の第4光炉の駐車場に居た。
先ほど上がってきた非常口の所である。
その扉を開けた。
こういった扉は普通、外からは開かない物なのだが。
そして下へ降りていく。
降り切ったところで足音に振り向く。
「どうして来たの。」
「心配だから。」
「水臭いね。」
「シンジ君達は?」
「私たちが狙いならこの方が安全だもの。」
「そういう事さ。」
「心配要らない。呼ばれてるのは私だけ。」
「なるほど。ミドリだけに呼びかける手段があったね。」
「うん。」
「何時から?」
「皆を集めた頃から。」
「奴が来てるのかい?」
カヲルは言いたくなさそうに聞いた。
「違う。別の誰かよ。」
「そうか。で、何処に?」
「判らない。でも、ほら。」
ミドリの指差す先で1台のエレベーターが扉を開けて停まっていた。

エレベーターは最上階まで一気に登った。
途中、ガラス張りのゴンドラから地上の動きが見えた。
もっとも、カヲルしか気が付かなかったが。
扉が開く。
何もない空間が拡がっている。
コンクリート剥き出しの柱が何本かある。
その影から人影が。
ひとり。
またひとり。
そして、3人目。
「お出迎えかな。」
カヲルの軽口に、しかし誰も返事はしない。
躊躇無く彼等の右手が火を噴く。
もちろん、カヲル達に通じはしないが。
「じゃ、さよなら。」
そう言うとカヲルは片手を差し出した。
壁がまっすぐに真ん中の男に向かう。
ヴァィンッ。
鋼鉄が弾けるような音。
男は数十センチ後方へ下がり踏み止まる。
「へぇ。」
ちょっとだけ、驚いた様子のカヲルにレイが言う。
「油断しないで。」
「ああ、大丈夫さ。」
「私がやるわ。」
ミドリが半歩前に出る。
下げたままの左手を軽く握る。
そしてそれをそっと開く。
開いた手のひらから細い光の筋が走る。
糸の様に細い3本。
そして3人の男達それぞれの右肩へ伸びた。
シュッ。
途中の空間で光の筋は一度動きを止める。
だが、やや明るく光った後、その中心を突き抜けた。
男達の肩を光が貫く。
ジジッ。
妙な音と共に煙が上がった。
間髪入れずカヲルが男達を弾き跳ばした。
3人はそれぞれ柱に打ち付けられ動かなくなった。
カヲルは、その内の一人に近づいて上着を脱がせた。
両肩に妙な機械を載せている。
いや、肩に埋まっているように見える。
「何だい、これは。」
「たぶん。」
ミドリが口を開く。
「量産型の防御壁照射器。」
「そういうことか。」
「私達の力の内、防御に限定して開発したのね。」
「でも、強度は大したことないな。」
「原理が違うのよ。」
「良く判ったね。」
「カヲルの壁を受けたとき。干渉光が走らなかったでしょ。」
「それで、ああいう破り方か。」
「そう。」
「面白い事をするね。ヨウコの技と少し似てるか。」
「見たことないから判らない。私のは小さい壁を縦に積み上げたものよ。」
「器用だね。」
「ありがと。」
「どうして肩だと?」
「私が設計するとしたら、肩に置くと思ったの。」
「なるほど。」
「さ、行きましょ。上よ。」
ミドリは更に上、屋上へ通じる階段へ向かった。
カヲルとレイも後に続いた。


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