「終りか。」
「わからない?」
「何がだ?」
「自分の状況がさ。」
「!」
リョウは自分を見た。
少なくとも笑ってはいない。
特定の感情と結び付かない表情になった。
「何だ、これは ...」
足下に何か落ちていた。
見覚えのある何か。
ああ、そうだ。
腕だ。
自分の。
「感想は?」
「何をやった。」
「別に。」
「壁は全て防いだはずだ。」
「では、その落し物は?」
「ありえない。」
「事実さ。」
「 ...まさか。」
「まさか自分の事を知らない訳じゃないだろ?」
「それに気付いたのか、この短時間に?」
「まあね。」
リョウの顔に少し落ち着きが戻った。
「見事だ。前言は撤回しよう。良く分かったな。」
「レイと一緒にしかけたときにね。」
「ほう。」
「タイミングを合わせた攻撃なのに、そっちの防御に
時間差があった。」
「で?」
「それに、その肩の火傷。」
「ああ、これか。」
「本能による防衛反射じゃ無いって事だろ。」
「ご明察。」
「つまり、見えない位置からの攻撃は防げない。」
「レイか。」
いつのまにか後ろに回っているレイを一瞥する。
「正確には、注意が逸れているときの攻撃が防げないんだ。
生まれついての自分の身体じゃ無い所為だがね。」
「正直だね。」
「驚きはしたが、大勢に影響は無いからな。」
「そうかな。」
「言っただろ、ミドリと同じ理屈さ。身体は入れ物に過ぎない。」
「無いと不便だろ。」
「多少ね。だが、別の用は済んだからね。
もう、よそ見はしない。防御は完璧さ。」
「別の用?」
「街は完全に掌握した。」
「ふーん。」
「信じて無いのか。」
「見えないからね。外からじゃ。」
「では、見せよう。」
辺りが輝きを増す。
色を失って白い闇となる。
そしてその一点が更に閃光を放つ。
「!!!」
やがて闇が去ると辺りは高熱を発した。
レイはミドリの身体をかばっていた。
カヲルもその周囲も元のままだ。
そしてリョウの周りは床のコンクリートが溶けていた。
「バカな!」
「良く狙ったほうがいい。」
「有得ない!」
「失敗したのさ。」
「こちらに戻ってくるのが早すぎたのだ。
彼等の技術では私の侵食は防げない筈だ。
もう一度だ、今度は完全にダウンさせる。」
「(無理よ。もう。)」
「誰だ!」
何処からか聞こえる声。
リョウは探した。
「不可能だ!」
その視線の先には、2つの瞳があった。
碧色の瞳が彼を見つめていた。