エピローグ

コンコン。
ドアをノックするものが居る。
「入り給え。」
1人の女性が入ってきた。
「結果が出たか?」
「反応消失しました。」
「どちらが残った?」
「どちらも反応しません。」
「2つ共か?」
「はい。」
「分かった。」
「 ..」
「ザドキエルとラハブはリストから削除だ。」
「わかりました。」

用は済んだはずだが、彼女はすぐには退室しなかった。
なにか、言いたげな視線を男に送っていた。

「構わんよ、言ってみたまえ。」
「必要だったのでしょうか。」
「この実験が成功すれば、相対的に君らの価値が下がる。
 そうすれば、君らは今以上に自由に暮らせるのだ。」
「でも ..」
「バルディエル、君が気にする必要はない。」
「はい ..」
「あれは、ずっと以前に死んでしまったのだ。
 その精神を模倣するシステムに記憶を与えたに過ぎない。
 彼らは生きてはいなかった、初めから。
 ただ、消えるだけだ。
 それに、いい夢を見れた筈だ。」
「ほんとうに、生きてはいなかったのでしょうか。」
「そうだ。」
「わかりました。」
静かに一礼すると彼女は退室した。

「気にする必要はない。」
誰もいない部屋で、もう一度繰り返した。


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